学生同士のグループディスカッションを見ていた。テーマは「終身雇用の是非について」だ。

 

今の学生は保守的であるとの見解もあるようだが、殆どの学生は「自分が最初に就職した会社に定年まで在籍する」とは思っていないようだ。いずれ何処かで転職したり、起業したり、そういったことが話題となっていた。

そこで、「何歳くらいまでに最初の会社をやめていると思う?」と聞くと、「30歳前後です」という声が多かった。

 

そこで私は一つ質問をしてみた。

「今話してもらったとおり、60歳まで一つの会社に勤めることは殆どない、と皆は考えているようだけど、もし法律で「定年を35歳とします。その後は各人が企業と自由契約です」ということが決まったらどう思う?」

これに対して学生のほとんどは「困ります」「反対」という回答だった。

 

なるほど、殆どの学生は自分が30前後で会社を辞めると言っているにもかかわらず、35歳になったら強制的に辞めざるをえない、ということには抵抗する。

理由を聞いてみると、

「ずっと働きたいと思っていても、辞めなければいけないのは不合理」

「35歳で職が見つかるかどうかはわからない。安心できない」

「できる人は再雇用されるが、できない人はクビになる。失業者がたくさん出て、格差が広がりそう」

などの意見が出た。

 

総合して見えることはやはり、「正社員はセーフティーネット」という意識だ。つまり「とりあえず会社員でありさえすれば、食べていくには困らない。」という発想である。

これはドラッカーの予言した、「知識労働者」とはずいぶん発想が異なる。著書「新しい現実」の中で、彼はこう述べる。

知識労働者であるということは、いかなる特定の雇用主にも組織にも縛られないことを意味する。

コンピュータの専門家にとって、就職口はデパート、大学、病院、政府機関、証券会社のいずれでも良い。彼らの関心は、給料を別とすれば設備が最新のものか仕事が面白いかである。

同じことは金融アナリスト、理学療法士、人事管理者、治金の専門家、セールスマン、グラフィックデザイナー、地方の美術館の企画担当者に当てはまる。

つまり学生たちは自分たちを専門家とみなしていない、ないし、専門家として自立していくと考えていないということだ。

 

しかし、現実には専門家として働く人、フリーランスは増えているようだ。

これは大きな変化である。また、フリーランサーのマッチングサイトは海外でも日本でも盛況であり、業績も延びている。例えば日本は「クラウドワークス」や「ランサーズ」などのフリーランサーのマッチングサイトが業績を伸ばしている。

 

ドラッカーは「知識」が社会の中心となると言った。

もしこれが本当であれば、35歳くらいまでには「自分が何の専門家となるのか」を見極める必要があるだろう。

ダニエル・ピンクは、「フリーエージェント社会の到来」の中で、アメリカではすでに4人に1人がフリーエージェントであると述べる。近未来の日本で同じようなことが起きる蓋然性は高い。学校で「専門家を目指せ」ともう少し強くメッセージを出しても良いと思うのだが、どうだろうか。

 

 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)