何度か書いていますが、しんざきはシステム関係の仕事をしており、今はそんな大きくないチームの責任者です。自分でも色々作業しますが、一応マネジメントもする立場です。
今とはまた違うチームにいた頃、チームの統合・再編成が行われたことが何回かありました。
チームメンバーは増えたり減ったりしますが、大体毎度、新しいメンバーを何人かは見ることになります。
当たり前のことですが、知らないメンバーと一緒にやっていく際には、まずその人にどんなタスクを振るか、どうタスクを振るかを考えないといけません。
何か新しい技術に触れていくならどのようにスキルのキャッチアップをしてもらうか考えないといけませんし、引き継ぎがあるなら引き継ぎの計画を立てなくてはいけません。
だからチームの再編成の時には、本格的に仕事を始める前に、それぞれのメンバー、及びそれぞれのメンバーの以前の上司に必ず面談とヒアリングをします。いや、別に特別なことではなく、多分どんなマネージャーでもすると思います。
そんな面談を行った人の中で、多分割と典型的な「タスクを毎回遅延させてしまう人」がいたことがありまして。その人と何回か面談をする内に、「タスクを遅延させてしまう時の典型的なメカニズム」について若干の知見が得られたような気がします。
常識だったりしたら申し訳ないですが、今回はその「タスクを遅延させてしまう時の典型的なメカニズム」について書いてみたいと思います。
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まず前提として、「メンバーのタスクを遅延させてしまうのは、メンバーではなくリーダーの責任」です。リーダーは、メンバーの処理能力に応じたタスクを振らないといけないし、そこに何か条件があるとしたらその条件に則ったタスクの振り方をしないといけない。これが基本です。
ただ、やはりリーダーの側にも限界というものはあって、タスクの進捗を見切れない時もありますし、最適でないタスクの振り方をしてしまうこともあります。
リーダーが若干妙なタスクの振り方をしてしまったとしても、メンバーがちゃんとアラートを上げれば問題は起きないし、なんだかんだで解決させてしまうことも多いんです。つまり、リーダーの失敗をメンバーにフォローしてもらえる時と、フォローしてもらえない時があります。
今回話に上がる人は、「タスクを抱えこんで色々遅延させてしまう」という頻度が非常に多い人でした。
自社案件が多いだけに、タスクの期日もなまじ融通が効いてしまうことが却って仇になって、色んなタスクをずるずると遅らせてしまうのです。当然残業時間も増え、その人はいつの間にやら、社内でも1,2を争うくらい残業時間が多い人になってしまっていました。
その人の名前を、仮にDさんと呼びます。前提として
「Dさんは、担当分野におけるテクニカルスキルには問題がない」
「業務経験自体は豊富である」
「必要な情報共有はちゃんと受けている」
とご認識ください。
自分の現場に来てもらう前に、私はDさんと何度か話しました。コーヒー飲みながら休憩所で話したこともあれば、タバコ吸わないのにわざわざ喫煙室に押しかけたこともありました。当時のリーダーさんにもお話を聞きました。
面談やらヒアリングで色々と話を聞くうちに、Dさんのタスクが遅れてしまう時には、二つの典型的なパターンがあることが分かりました。
まず一つは、「いわゆるQuick & Dirtyを要求された場合」。
「適当でいいから、取り敢えず出来るところまでやって」みたいな、細かく品質を指定しないタスクを振られた時、Dさんはほぼ百発百中、そのタスクをずるずると遅延させていました。
これ、リーダーとしては「細かい品質を要求しない分タスクとしては楽な筈」と勘違いしてしまいがちなんですが、違うんですね。
「適当でいいから」というのは、「ゴールラインの設定をメンバーに丸投げしている」ことと同じ意味なんです。「どこまでやればいいか、というのを考える」というのは、それだけである程度慣れと適応を必要とするタスクです。
勿論、「出来るところまででいいから」という言葉通りに、本当に「出来たところまで」で成果物を出せる人、というのもいます。むしろそっちの方が得意、という人もいます。ただこれ、苦手な人にはとことん苦手なことなんです。
完璧主義という程きっちりしていなくても、ゴールが曖昧だとそれだけでタスク着手のハードルが上がってしまう人、というのは全く珍しくありません。むしろ凄く多いです。
Dさんの場合、それに加えて、「自分の中でどんどんハードルを上げてしまう」という傾向もあるようでした。
つまり、時間が経てば経つ程、「これだけ時間がかかったからには、それなりのものを出さないと…」と考えてしまうのです。
Dirtyのままで成果物を出してしまうと、「あれだけ時間かけてこれか?」と思われてしまうのではないか、という恐怖心が凄く大きいんですね。
結果として、時間がかかればかかる程、ますますタスクがDさんの中で重圧を増してしまい、取り掛かるハードルも作業のハードルも上がってしまう、という悪循環が起きているようでした。
これ、「タスクを放置した時、自分の中でそのタスクがどんどん重くなってしまう」典型的な原因の例でもあると思います。
もう一つのパターンとしては「タスクの追加が行われた場合、ないしタスクの追加が予告された場合」でした。
いや、これ、実際にマルチタスクになってるわけじゃない場合も多かったんです。リーダーも、Dさんのタスク消化の傾向を把握していないわけではないので、複数のタスクを同時に振ったりはしません。
ただ、リーダーの感覚としては「工数の見当をつける為にちょっと相談しただけ」であっても、Dさんにとっては「新しいタスクが来るかも知れない」という、ただそれだけで思考の荷物になってしまうんですね。
今のタスクも終わっていないのに、次のタスクが来る(かも知れない)。これによって、「優先順位が決まっていない細かいタスク」というものが、どどっとDさんの頭の中に入って来てしまいます。
人間、優先順位が決まっていないタスクを複数持っていると、物凄く明白にパフォーマンスが下がります。
中にはマルチタスクが得意な人もいますが、そういう人は大体の場合、「タスクをやる順番」を殆ど無意識の内に整理してしまっており、最優先のタスク以外に頭のリソースを割かないことに慣れています。普通の人はそうは行きません。
そしてDさんは、「無意識の優先順位付け」が物凄く苦手でした。優先順位付けに頭のリソースを取られてしまうと、今やっていることまで進まなくなります。これまた悪循環です。
つまり、Dさんのタスクが遅れてしまう最大の原因は、「品質についての考え過ぎ」と「タスクの優先づけの混乱」の二点でした。
ただ、その原因を作ってしまっていたのは、いずれもリーダー側だと私は思いました。
Dさんがなまじ業務経験が長い為に、いわば甘えたタスク振りをしてしまっていたのです。チーム全体のパフォーマンスとしては大きな問題が出ていないこともあって、個別のタスク遅延の原因追求を深く掘り下げていないようにも見えました。
Dさんの問題自体は、割と簡単な手順を細かく踏むことで、改善することが出来そうに思いました。
・可能な限り、タスクを依頼する際の要求品質は細かく明確にする
・品質が求められない時には、その旨をはっきり宣言する
・シングルタスクを徹底する。一つのタスクを閉じるまでは、他のタスクの話をしない
・納期が不明確なタスク依頼をしない
・進捗確認を入念に行い、「今どこまで進んでいるか」をなるべく細かくチェックしてあげる
要は「管理強度を上げればちゃんと期日通り出来る」ということです。当たり前の話ですよね。
とはいえ勿論、細かく管理を行えば行う程、リーダーの負荷は上がります。多忙だった前のリーダーが、1人1人にそこまでの管理工数を割けなかったことも、分からないではないんです。
ただ、Dさん自身、タスクが遅れてしまっていることをリーダーの責任というよりは自分の責任と捉えてしまっており、かなり悩んでしまっていることもあり、当面は細かく管理してあげないとなーと思いました。
特に「タスクの要求品質の明確化」と「シングルタスクの徹底」を重点的に行うと、当たり前ですがDさんの工期遅延は改善に向かいました。
少しずつ管理強度を下げては遅延が始まって、また管理強度を上げて、みたいなことを数ヶ月くらいで何回かやってしまったんですが、Dさんとも合間合間に色々お話して、最終的には「シングルタスクを徹底する限り、Dさんの工期遅延はほぼ発生しない」というところまでいけました。成功例です。
勿論、こんなに上手くいかなかった例もあるので、それについてはまたいずれ書こうと思うんですが。
この件は私にとって、「リーダーの甘えは工期の遅延に直結する」という、一つの学びにもなったと思います。
リーダーは、タスク遅延の原因を、基本的には「タスクの振り方」に求めるべきですよね、と。
遅れてしまって悩んでいる人は、自分に振られるタスクの性質について確認して、リーダーと相談してみるといいかも知れませんよ、と。
取り急ぎは二つの結論を出して、この記事を締めたいと思います。
今日書きたいことはそれくらいです。
(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Ray Ordinario)