管理者がまずやるべきことは
「仕事が回っていないとしたらそれは管理者である自分のせいであって、誰か休んだ人のせいではない」
ということを、明確に部下や周囲に伝えることなんじゃないかなあ、と思うんです。
何度か似たようなことを書いているんですが、先日こんな記事を読みました。
もちろん男性社員であるため有給の取得は管理職の顔を窺いながら取ろうとするも「いきいきママ」で空いた穴を埋める必要があるため口頭で却下されていた
残業・夜勤・休日出勤もあり振替で休めるにしてもスケジュールを会社が勝手に決めて2日以上の連休取得も口頭で注意されるような状態だった
更に子持ち男性社員の育休取得で空いた穴を埋めるために有給取得さえ許されない時期もあった
彼らの給与はどうだったか?「いきいきママ」や平社員とほぼ変わらない、幹部候補になっていた男性社員が3人辞める前にこんな事を言っていた
「女性ばかり優遇して俺らの事を評価しない会社は絶対おかしい」・「なんで周りより忙しいのに給与が上がらないのか」「そもそも休みをとる余裕がないなら女に優しくしてる場合じゃないだろ」
これですね。
私、上の記事に「上司」の話が全く出てこないのが一体何故なのか、凄く疑問なんですが。どう見てもこの話の主役、上司だろ、と。
この話、この人の上司だか管理者が、二重の間違いをしてしまっています。
正直、マネージャーとしては犯罪レべルの錯誤だと思います。
一つは、誰かが産休や育休をとった程度で、他の人が殆ど休みを取れなくなるようなタスク状況を放置していること。
もう一つは、それを「管理者側の問題」であると明示しないで、社員が社員同士で悪感情を抱き、理不尽さを感じてしまうような環境を放置していること。
いや、上記の記事が実話かどうかは知りませんけど、こういう状況、私も自分で実際に見たし、というか自分でも体験したし、結構よくある話だと思うんですよ。
まず第一に、「今あるリソースで仕事が回らないとしたら、それはマネジメントの敗北である」ということ、「リソースは当然、取るべき休みをとった上での値で計算しなくてはいけない」ということは、少なくとも管理者の側は当然の前提として承知しておかないといけないですよね?
何故かこれを「ただの理想論」って決めつける人って結構いて、まずその時点で話がかみ合わないことってあるんですけれど。
これ別に、本来理想論でもなんでもないと思うんですよ。
ちゃんと休みをとってもらった上で、その状態でタスクが回らないとしたら、管理者は「そもそも人が足りません」と会社に問題提起しなくてはなりません。
で、人がすぐに入れられないというなら「じゃあタスクを減らしてください、でなければ納期を伸ばしてください、全部は出来ません」と、会社と交渉しなくてはいけません。
そんなもん理想論どころか、マネージャーとして最低限の仕事なんじゃないの、と思うんですよ。
それが出来ないで何の為のマネージャーなのか、というレベル。
ただ、そういう仕事はきちんとした上で、確かに「どうしても部下に無理をしてもらわないといけないタイミング」というものが発生することはあります。それは分かります。
例えば、どーーしてもそれを達成しなかったら会社が甚大なダメージを受ける、というタイミング。
どーーしても納期を間に合わせないとボーナスの原資も確保出来ない、というタイミング。
それが恒常的に発生するようだったらその職場何かがおかしいですけど。
ただ、それならそれで、管理者は「負け」を一旦認めないといけない。
「今回マネジメントは敗北してしまったが、それはそれで状況を収束させなくてはいけないので、部下に無理してもらうよう頭を下げる」
ということをしなくてはいけません。「自分のせい」ということを明示しなくてはいけません。
冒頭の記事で最もでかいと思われる錯誤は、「どう見てもマネジメントが敗北しているのに、何故かそれを社員同士の不満のぶつけ合いという状態にして放置している」点です。
そんなもん、最終的に会社に理不尽な不満ぶつけて辞めざるを得なくなっても当たり前やん、と。
別に、女性による育休やら産休やらって、全然この話のポイントじゃないと思うんですよ。
誰かが休んで仕事に穴が開く、なんて、休む理由に関わらずどんな状況でも起こり得ることです。
誰かが事故ったらどうするんですか?キーマンが急病で長期入院したら?
ただ、それは「誰にでも起こり得ること」なのだから、「その人のせいではない、その人が悪いことをしたわけではない」という認識は徹底しないといけない。
インフルエンザになって休んだら皆に憎まれる職場なんて嫌じゃないですか。誰かが休むことで社員同士が憎み合う展開なんて、マネジメントとして最も避けないといけないことなんです。
「職場を上手く回る状態に保つこと」って上司の「当然の義務」ですよね?
そこでもし、不満の滞留が発生したらそれこそ面談でもなんでもしてその声を吸収しないといけないし、不満の原因が「他の誰かの休みや待遇」であったら、「その人の責任じゃなくてマネジメントの責任だ、申し訳ない、改善する、具体的にやることはこれこれ」といった相談をしないといけません。
少なくとも、上司がきちんと「産休で他の誰かにしわ寄せがいっているのは、上司である自分の責任だ」と宣言していたら、こんな風に社員同士で不満がぐるぐる回って、一部の社員が会社に対する理不尽さを感じ続ける羽目になる、なんてことにならない筈なんですよ。
そういう点で、私が冒頭の記事を読んだ感想は
「上司が全部悪い」
「そもそもこの人は何で上司の話しないで制度の批判だけしてんの?」
の二点です。よっぽど上司の存在感がなかったんでしょうか。
しんざきは現在、そんな大きくないチームの管理者をやっています。一応マネージャーです。
で、お恥ずかしいことに、部下に残業させてしまったり、無理をしてもらったりしてなんとかタスクを完遂する、という場合も、残念ながら時にはあります。申し訳ございません。
ただ、そんな時でも、「これはマネジメントの失敗、俺の責任だ」ということは必ずきちんと認めた上で、改善策についても会社と交渉しつつ部下にフォローを頼む、ということは徹底しているつもりですし、そこは最低限の責任としてこれからも徹底していかないとなあ、と。
少なくとも、「誰かが休んだことを、他の誰かが責める」なんて状況を放置するようなマネージャーにだけはなってはいけないなあ、と、そんな風に思うわけです。
今日書きたいことはそれくらいです。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】
ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ—— 「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
【プロフィール】
著者名:しんざき
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ。三児の父。
レトロゲームブログ「不倒城」を2004年に開設。以下、レトロゲーム、漫画、駄菓子、育児、ダライアス外伝などについて書き綴る日々を送る。好きな敵ボスはシャコ。
ブログ:不倒城
(Photo:Frans Vandewalle)