「少年よ、大志を抱け」という有名なフレーズはウイリアム・スミス・クラークという一人のアメリカ人教師によって発されたと言われる。
多くの人が「クラーク博士」として知るこの人物だが、実際に当人が残した業績は「偉業」というほどではないため、この言葉によって有名となった人物と考えて良いだろう。
では、本人が偉業を成し遂げたわけでもないにも関わらず、なぜ「少年よ、大志を抱け」という言葉が広く語り継がれるようになったのだろうか。
私は、教え子その他多くの人物にこの言葉が「本質を表している」と考えられたからではないかと思う。
「少年(少女でも良いと思うが)よ、大志を抱け」のどこが本質であるのか。それはこの言葉が「想像しなければ実現できない」と言っていることにある。
例えば、東大への進学においては比較的、私立中高一貫校の実績が高い、という事実がある。文科省のデータでは私立高校に通う学生の割合は全体の3割だが、東大生の約半数は中高一貫校に通っていた。
「能力の高い人々が集まっているから、東大に入学する人が多い」と思う人がいるかもしれない。そういった一面もあるだろう。
しかし、私立中高一貫校でなくても能力の高い人はゴロゴロいる。また、私立だからといってレベルが高いとは限らない。よく知られている通り、地方は一般的に公立のほうがレベルが高い。
思うに、私立中高一貫校が実績を残す一番の理由は「東大を目指そうと思わせる環境が用意されている」ということである。
例えば先生が「東大を受けろ」と薦める。先輩や友人が東大を受験していることで「東大を受けてみようかな」という気持ちになったりする。また、東京には私立中高一貫校が多いが、地理的に東大が近いので、受験のハードルが低い。
要は、少なくとも「東大生になりたいと願った人」しか東大生になれないので、「なりたいと願う人の割合が多い学校ほど、実績を残す」ということだ。
話を元に戻そう。要は「目指さないと、実現しない」が人生の本質である。
「勉強ができる」というのは「勉強ができることを目指した人」の中から生まれる。なんとなく「できればいいな」と思う程度ではダメである。
「プロ野球選手になる」というのは「プロ野球選手になることを目指した人」の中から生まれる。「野球をするのが好き」という程度ではダメである。
「文筆家になる」「起業する」「金持ちになる」であっても、全て同じだ。才能云々以前に、目指さない時点ですでにその道は絶たれている。なれればいいな、という程度ではなく、目指す、と決める必要がある。
ユニクロの柳井氏をはじめ、企業経営者が頻繁に「経営は、ゴールからさかのぼって考える」と述べているが、これも同じ理由による。「この会社を◯◯のような姿にしたい」と強く思うことから経営は始まる。
「なりたい」「やりたい」というものがない状態であっても、生きる上で特に支障はない。そして、それを持たなければならないわけでもない。
だが、何かを成し遂げたい、というのであれば、それは必ず明確にする必要がある。だから、「少年よ、大志を抱け」は本質だと皆が感じ、語り継がれたのではないだろうか。
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ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。

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投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
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・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
(2025/6/2更新)
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(Photo:Wikipedia ウィリアム・スミス・クラーク)