コンサルタント時代は経営者に会うことが多かったのだが、最近は起業家によく会うようになった。
経営者と起業家、何が違うの?と聞かれそうだが、厳密に言えば起業家は経営者だが、経営者は起業家であるとは限らない。数いる経営者の中でも、なにもないところから会社を作り出す行為を行なうのが、起業家、というわけだ。
先日、ある知人の起業家のところに訪問した際に、学生の方が何人か、彼にインタビューを行っていた。彼らは経営学部の学生で、ゼミでの発表に利用するという。
彼は快く様々な質問に応えていた。その質問の一つに印象深いものがあった。インタビューの最後に、学生たちはこのように質問した。
「起業を成功させるために最も重要なことはなんですか?やはりアイデアでしょうか?それとも資金ですか?」
彼は少し考えてこう答えた。
「君らの求めている答えとは少々ずれるかもしれないが、3つのことが重要だと思っている。」
「それは、何ですか?」
学生たちは興味津々である。
「これは、起業に限らないかもしれないけれど、
1.やらないと、始まらない。
2.見てもらわないと、良くならない。
3.続けないと、成功しない。
の3つかな。」
「詳しく教えて下さい」
「そうだね、まずあたり前のこととして「やらないと、始まらない」がある。まあウチでは「口より手を動かせ」と言ってるけどね。
何かをやりたいんです、してみたいです、なりたいです、と言うのはカンタンだけど、実際に「やる」ことが肝心だ。例えばうちでは「こんな機能があるといいと思います」というアイデアを出すだけではほとんど評価されない。それを現実に作ってこそ、評価されるんだ。」
「アイデアには価値が無いということでしょうか?」
「そこまでは言わないけど、出来上がったモノの価値と比べると、まあ1万分の1以下だね。」
「なるほど…次は?」
「見てもらわないと、良くならない、は積極的にユーザーに批判や意見をもらえ、ということ。ソフトウェアでも、文章でも、音楽でも絵画でも、世の中に出して皆に見てもらって初めて進歩する。」
「僕はブログを書いているんですけど、文章が下手で恥ずかしいのですが…」と一人の学生が言う。
「文章がうまくなりたいかい?」
「はい。」
「なら、見てもらって意見をもらわないと。」
「わかりました…。」
「そして最後、これは綺麗に言えば「成功するまで続けろ」なんだけど、もっと泥臭く言えば、成功するまで続けられるように「死ぬな」ということ。」
「死ぬ?」
「ごめん、死ぬは比喩表現だよ。例えば会社の死は現金が無くなること。ブログの死はやる気が無くなって更新されなくなること。アーティストの死は「自分には才能がない」とおもって作品を作らなくなること。」
「でも、それって成功する保証はないということですよね。」
「そうだよ」
「それでも続けるのは、なぜですか?」
「なんでだろうね。」
「使命感とか、世の中を変えてやろうとか、そういった話ではないのですか?」
「私は普通の人だから、そんなふうに思ったことはないよ。…そうだな、私は成功したいのではなく、これを続けたいだけなのかもね。」
「…?」
「こう考えてみて欲しいんだ。もし成功したら、私は経営をやめるかな?ブロガーは、ブログを書かなくなるかな?アーティストは作品を作らなくなるかな?」
「そんなことはないと思います。」
「そうだろう。私たちは、これがやりたいのさ。」
学生たちは、満足して帰っていった。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))
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・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。
【大学探訪記Vol.15】起業イベントで出会う大学生ってどんな人か?
【大学探訪記 Vol.14】建築材料ならお任せ!俺たちコンクリート研究チーム。
【大学探訪記 Vol.13】ビルやダムなどの巨大なコンクリート構造物を長持ちさせるにはどうしたら良いのか?
・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。
【仕事のチカラ Vol.1】「新しい働き方」を演出していく。そんな仕事です。
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(Photo:Susanne Nilsson)