コンサルティング会社、とくに中小企業向けで「短期間で会社の業績を劇的に改善させます」というキャッチを掲げている会社をよく見かける。
「劇的に改善させる」というキャッチは聞こえが良いので、そういった会社に依頼をしている中小企業の経営者を数多く見たが、コンサルタント達はどうやって一気に業績を改善させるのか、その手法は以下のとおりだ。
1.まずはコストカット
まずは人件費以外のコストで大きなところを重点的に改善する。だいたい槍玉に上がりやすいのは、交際費、広告宣伝費、交通費、通信費、消耗品費など。場合によって福利厚生費、研修費など。家賃などもカットの対象になる。
これだけで営業利益率が5%程度変わる会社もあるから、とりあえずの「劇的に改善させます」という言葉の裏付けにはなる。ただしこれらの施策は一過性だ。
2.次に人件費
コストカットをしたら、本丸である人件費に手を付ける。この施策は恒久的ではあるが、反発を生みやすいので慎重に事を運ぶ。当然、短期間で成果を出すためには反発の少ない場所から手を付ける。
すなわち、非正規雇用は切りやすいので、単純労働をしている非正規雇用者をまず切り詰める。また、どこの会社にも働いていない正社員がいるので、彼らをそこに宛てることも多い。文句を言ってくる人は退職に追い込む。
また、賞与は削りやすいため、支給条件を厳しくしてカットする方向に持っていく。これでさらに利益率が改善する。
また、「目標管理」を急に厳しくしたりすることもある。成果主義的な締め付けをすることで「意識を変えましょう」と経営者にコンサルタントが囁やけば、大抵の場合は通ってしまうものだ。だが、実質は人件費の削減であることも多い。
ともあれ、経理上の数字は改善する。
3.そして売上を増やす施策
売上は急には増えない。なぜかといえば会社内部だけではできないからだ。顧客の評価を上げることは難しいのである。ただ、手段がないわけではない。すなわち、
「欠品を減らす」「売れ筋の商品を重点的に並べる」「広告を見直す」「オペレーションのスピードを上げる」「利益率の低い商品をやめる」「クロスセルに力を入れる」「顧客を絞り込む」
などのオーソドックスで商品の大幅な変更をせずともできる施策をひとまずやり切ることで、売上の若干の改善を見込むことができる。
この辺りはやり始めてから半年〜1年半程度は効果があるが、「商品が悪くはない」ことが条件だ。
この辺りまでが、フルセットで行われると、それなりに業績は持ち直す。だが、多くの方がお気付きの通り、これらの施策は「急場しのぎ」にすぎない。
企業が生き残るためには本質的に「新しい商品と、マーケットを作っていく」ことを行わないといけないのだが、それらのことは短期間で結果が出ることもないし、失敗する可能性が非常に高いため、「劇的に改善させます」というコンサルタントがやることはない。
当たり前だが「絶対に成功する新しい商品開発」ができるのであればコンサルタントなんぞせず、自分で商売をやるだろう。
また、人件費やコスト削減などはモチベーションの低下や、数年先を見据えた投資が抑制されてしまうなどの弊害もあるため、「劇的に改善」という施策はそれなりにリスクも伴う。
さらに、コンサルタントがいなくなったあと、社員がこれらのことを引き継げるか、という大きなリスクも控えている。
「劇的に改善」は聞こえは良いが、本質的にはコンサルタントを使うのであれば、「少しずつ、社員の成長のスピードに合わせて、見かけの数字を良くするだけではなく、本質的な改善をする」方が継続性という観点からはおすすめなのは言うまでもない。
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