ご存じの方も多いだろうが現在、雇用者数においてトップ3である職種、
「工場労働者」、「営業」、そして「事務職」は消えつつある。
(参考:平成22年国勢調査 http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/kihon3/pdf/gaiyou.pdf)
現在、製造現場はもはや主役ではない。さらに、webの発達によりセールスの役割も大幅に縮小した。飛び込み、テレアポ、ルートセールスが是とされた時代は過去のものとなった。
「そんなことはない、事務職員の数は変わらないのでは」という方もいようが、昔は大半が正規雇用者だったが、現在は非正規雇用者の方も多い。
中身を見れば徐々に事務職は会社から消え、派遣会社が台頭したことがわかる。
単なる頭数だけ見れば、変化がないように見えるが、実際には経理ソフトやウェブサービスが経理部員と営業事務員を大幅に減らしたのだ。
かわりに増えているのは、コンサルタントなどの「専門性の高い職業」と、エンジニアなどの「技術的職業」であり、ますますブルーカラー、ホワイトカラーが減少し、知識を持つ労働者の割合が増えていることがうかがえる。
ピーター・ドラッカーが言うところの「知識労働者の台頭」は、統計的に明らかである。
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こう言った状況で、現在「雇用のミスマッチ」が叫ばれている。
「雇用のミスマッチ」とは換言すれば「だれでもできる仕事」が、無くなったことによる、現場の需要と労働者のスキル供給能力のアンバランスである。
だから現在の若年労働者による「良い仕事が無い」との怨嗟の声は正しい。
なぜなら専門性も技術もない「若いだけ」の人間を雇う動機が、企業には存在しないからだ。必然的に、残る「だれでもできる」仕事は労働条件が過酷で、給与も安く、そしてつまらない仕事である。
畢竟、今の20代の若者が「こうすればだれでも稼げる」というネット上の文言に容易く騙されてしまうのは、「だれでも稼げる仕事」が労働市場から消えてしまったからである。
彼らの親世代、また現在の企業幹部などの年長者からみれば「仕事を選り好みするな、何を贅沢なことを言っているのだ」と思うかもしれない。
だが、年長者が就職活動をした時代は「だれでもできる仕事」が大量にあった時代なのだ。彼らの的はずれな職業観で、若者を責めることはできない。
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では、専門性のない人はこれからの時代、どう身を守ればよいのか。
これについては、現在30歳弱の、ある有名コンサルティング会社のマネジャーの話が参考となるかもしれない。
彼は私立文系の学部を卒業したが、いわゆるブラック企業に入社した。
「ブラック企業は想像以上に過酷で、そして希望がない」と彼はいう。
「ここで成功できる感覚も、人生がうまくいく感じも全く持てなかった。だから、なんとか正気でいられるうちに、脱出する方策を探った」
「具体的に何をしたのですか?」
「まず、何が何でも社外に人脈を増やさないとダメだ、と思った。ブラック企業の周りにはブラック企業しかないから、全く別のルートを探った。社外の交流会に顔を出してみたり、イベントに行ったりした。」
「それから?」
「自分は信用できる人間だ、ということをひたすらアピールした。絶対約束を守る、とか会合とかで面倒な役回りを引き受ける、とか。結構、約束守らない人が多いから、約束をきちんと守るだけで信用されるよ。」
「なるほど。」
「あとは情報発信が命かな。自分から人と人を繋いだり、これは、という人に会いに行ったら、ツイッターやフェイスブックで情報共有したり。とにかく人の役に立つことを発信するように心がけた。」
「精力的だね。」
「絶対に脱出してやる、と思ったから。でも、その活動のおかげで、自分に何かあると声をかけてくれる人がちらほら出てきた。でもオレ、何の専門性もないから、「何かの技術ないしスキルが身につく」って言えそうなところに注意深く転職した。最初はECサイトのマーケティング、そこは数年でやめて、次にwebサービスの運営。」
「何か意図はあったの?」
「伸びてる会社に行く、っていうのが鉄則かな。そこに在籍したっていうだけで、高く買ってもらえる経歴になるんだよ。」
「なるほど。」
「で、3回転職して、ようやく今のポジション。暫くはここで頑張ってみようかと思ってる。」
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「知識労働者は、自らをマーケティングしなければならない」とピーター・ドラッカーは語った。
彼は単純に、それを実践しただけなのだ。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
ティネクト代表の安達裕哉が東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。
ティネクトでは現在、生成AIやマーケティング事業に力を入れていますが、今回はその事業への「投資」という観点でお話しします。
経営に関わる全ての方にお役に立つ内容となっておりますでの、ぜひご参加ください。東京都主催ですが、ウェビナー形式ですので全国どこからでもご参加できます。
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
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