職場でだれかがミスをしたとする。だが、だれがやったかはわからない。
そんなときあなたは、犯人を探すだろうか。それとも、「犯人探しは良くない」と言うだろうか。
わたしの感覚では、後者の方が多いんじゃないかと思う。
というのも、「犯人探し=悪」だと考えている人が一定数いるからだ。
でもわたしは、この「犯人探し=悪」という図式に、ちょっと違和感を持っている。
ミスした人を吊るし上げることに意味はないが、責任の所在をはっきりさせることは大切だと思うのだ。
だれがやったかが問題じゃなくてみんなで気をつけよう
以前働いていた家具屋で、だれかがお客さんの個人情報が書かれた紙を、ポンと食器棚の上に置きっぱなしにしていたことがあった。
マネージャーに「気をつけてね」と言われたので、「わたしじゃないです」と答えたのだが、
「だれがやったかが問題じゃなくてみんなで気をつけよう」
と言われた。
なるほど、今後同じことが起こらないように、みんなが気をつけることは大切だ。
でも、「みんなで気をつける」ことと「だれがやったのかをハッキリさせること」は、まったく別の話じゃないだろうか。
マネージャーはただ、全員に注意することで「犯人探し」を避けたのだと思う。
個人情報を放置してしまった「だれか」の責任を追求することなく、全員に注意することでその責任を分散したのだ。
(損害を与えるようなミスではなかったから気にしなかった、という側面もあるだろうが)
みなさんも、「犯人探しは良くないことだから」と連帯責任にされた経験はないだろうか。
わたしは上記の例以外にも、チラホラと思い浮かぶ場面があるのだが、そのたびにちょっとモヤモヤしてしまった。
責任を明確にするorうやむやにするという選択
犯人探しを忌避するのは、「責めてもなににもならない」だとか、「職場の雰囲気が悪くなる」という考えがあるからだ。
たしかに個人を責めても結果は変わらないし、だれかのミスで仕事が増えたら、雰囲気が悪くなるかもしれない。
では、「じゃあ責任をうやむやにしてみんなが疑心暗鬼になるのがいいことなのか」というと、答えは「NO」ではないだろうか。
わたしは、原因究明の放棄こそ、良くないことだと思うのだ。
犯人探し=悪だから、黙っていれば勝手にみんながフォローしてくれる。
わざわざ自分のミスをカミングアウトする必要もない。そう考える人もいるだろう。
まったく関係ないにも関わらず、あたかも容疑者のひとりとして扱われたことで、他の人が不満を持つことだってあるかもしれない。
それはそれで、どうなんだろう。
自分がミスしたならちゃんと謝って事情を説明したいし、だれかがミスをしたなら事情を理解したうえで協力したい。
なんとなくうやむやなまま自分のミスがなし崩し的に流れていくのも、だれの尻拭いかもわからないままプラスアルファで働くのも、わたしはイヤだ。
(ミスをしたのなら自分で名乗り出ればいいだけだが、「犯人探しをしない」がスタンダードであれば、あえて名乗り出るかはその人の良心に大きく左右されることになる)
責任をうやむやにするのがチームワークなのか
たとえばスポーツの試合の後、どこでも反省会を行うだろう。
それが負け試合だったら、「なぜ負けたのか」「君はこうすると良かった」「君の課題は○○だ」と話し合うはずだ。
それを「犯人探し」と言う人なんていない。ただ、次は勝てるように、負けた理由を客観的に分析しているだけである。
それを怠って「犯人探しは良くない」とうやむやにし、「次もがんばろう!」と言ったところで、チームがいい方向に進むのだろうか。
少なくとも、コーチやキャプテンがそんなことを言い出したら、コーチやキャプテンとしての資質を疑うだろう。
チームワークとは、責任をあいまいにすることでも、波風を立てないために仲良しこよしすることでもない。
目的を達成するために、互いが思っていることを伝え合い、補い合って現状を良くしていくことだ。
そのためには、責任の所在をハッキリさせるという過程も必要になる。
過剰に個人を叱責する人がいたり、ミスした人を許さない空気があるとしたら、たしかに犯人探しはいいことではない。
でもそれは「犯人探し」が悪いのではなく、単にその人やその環境に問題があるだけだ。
「犯人探し」というより「失敗の精査」が必要。
仕事をするなら、責任が発生する。成功を評価するのも当然なら、失敗を精査するのもまた当然だ。
ミスを次に活かしたいのであれば、原因を調べるためにも「犯人」の証言は必要になる。
だれがどう失敗したのかがよくわからないまま、ちゃんとした対策なんて取れないからだ。
「犯人探しは良くない」と責任をうやむやにしてしまえば、責任感を持つ人やミスを報告する人が減るかもしれない。
だからわたしは、トラブルがあったらちゃんと原因究明するべきだし、責任をうやむやにするのはよくないと思っている。
さて、みなさんはいかがだろうか。
(2025/7/14更新)
ティネクト(Books&Apps運営会社)提供オンラインラジオ第6回目のお知らせ。
<本音オンラインラジオ MASSYS’S BAR>
第6回 地方創生×事業再生
再生現場のリアルから見えた、“経営企画”の本質とは
【ご視聴方法】
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当日はzoomによる動画視聴もしくは音声のみでも楽しめる内容となっております。
【今回のトーク概要】
自己紹介とテーマ提示:「地方創生 × 事業再生」=「実行できる経営企画」
保育事業再生のリアル/行政交渉/人材難/資金繰り/制度整備の具体例
再生支援は地方創生の基礎。経営の“仕組み”の欠如が疲弊を生む
経営戦略・KPI設計・IRなど中小企業とのギャップを解説
「当たり前を実行可能な形に翻訳する」方法論
数字を見える化/仕組みで回す/翻訳して実行する
経営企画は中小企業の“未来をつくる技術”
【ゲスト】
鍵政 達也(かぎまさ たつや)氏
ExePro Partner代表 経営コンサルタント
兵庫県神戸市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。3児の父。
高校三年生まで「理系」として過ごすも、自身の理系としての将来に魅力を感じなくなり、好きだった数学で受験が可能な経済学部に進学。大学生活では飲食業のアルバイトで「商売」の面白さに気付き調理師免許を取得するまでのめり込む。
卒業後、株式会社船井総合研究所にて中小企業の経営コンサルティング業務(メインクライアントは飲食業、保育サービス業など)に従事。日本全国への出張や上海子会社でのプロジェクトマネジメントなど1年で休みが数日という日々を過ごす。
株式会社日本総合研究所(三井住友FG)に転職し、スタートアップ支援、新規事業開発支援、業務改革支援、ビジネスデューデリジェンスなどの中堅~大企業向けコンサルティング業務に従事。
その後、事業承継・再生案件において保育所運営会社の代表取締役に就任し、事業再生を行う。賞与未払いの倒産寸前の状況から4年で売上2倍・黒字化を達成。
現在は、再建企業の取締役として経営企画業務を担当する傍ら、経営コンサルタント×経営者の経験を活かして、経営の「見える化」と「やるべきごとの言語化」と実行の伴走支援を行うコンサルタントとして活動している。
【パーソナリティ】
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
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【プロフィール】
名前:雨宮紫苑
91年生まれ、ドイツ在住のフリーライター。小説執筆&
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