こんにちは。コワーキングスペースBasispointを運営する、AscentBusinessConsultingの北村です。
最近コワーキングスペースを運営しているためか、リモートワークに関するご相談をいただくことが増えました。
聞くと、多くの日本企業にとって「リモートワーク」は意外とハードルの高いもののようです。
例えば、
「ちゃんと仕事をするのか」
「指示が伝わらないのではないか」
「顔をあわせないと不安だ」
など、様々なリモートワークにまつわる悩みをお聞きします。
そこで今回はリモートワークのポイントについてお話をいたします。
リモートワークは「できる人」の特権?
私が以前在籍していた外資系企業ではリモートワークは当然のように行われていました。
そして基本的には
・勤怠は問わないが、そのかわり成果は出す
・成果が出せなければ職場を去る
という2つの条件が支配的な価値観でした。
つまり、「任された仕事はきっちりこなして、目標達成する」ことがリモートワークの前提条件であり、そうでなければリモートワークはできなかったのです。
(当然、成果を出せなければリモートワークだけではなく職も失いました)
だから、リモートワークは、「仕事ができる」ということが前提だったのです。
しかし、このような文化は日本企業においては一般的ではないでしょう。
「目標達成できなければ、職場を去る」という考え方は外資系のコンサルティング会社特有のものです。
日本においてはそのような会社は少数ですし、普通、簡単に解雇はできません。
したがって成果にあまり厳しくなく、社員が
「目標達成しなくてもいいじゃないか」
「そもそも仕事の成果が明確ではない」
「別に給料が下がってもいい」
と思う人が多かったり、終身雇用が完全に保証されていたりすれば、リモートワークは機能しません。
あるいは
「最悪、クビになっても次の職場を探せばいいじゃないか」
と思うような人が多い場合も同様です。
「いかに社員を監視するか」という発想のリモートワークから脱却するには
ところで、今年の頭に、日経新聞でこんな記事を見ました。
リモートワークをしている社員を、「監視カメラ」で監視できるというサービスに、多くのニーズがあるというのです。
在宅勤務の広がりで専用の情報システムが増えている。キヤノンITソリューションズ(ITS)は2月、社員がパソコンの前にいることをカメラで確認し、勤務時間に反映するシステムを発売する。「そこまでする必要があるのか」との声も上がりそうだが、社内外で浮上した問題が発端だった。
「きちんと仕事をしているか確認ができない」。システムの開発を担当したキヤノンITSの石原保志さん(52)は営業を通じて多くの企業の相談を受けていた。新システムはパソコンに備えたカメラで顔を撮り、顔認証機能で登録した本人の在席と離席を判別する。
つまり、「成果でなければクビ」にできない会社は、「どうやって社員を監視するか」に行き着くことも多い、というのがこの記事の意味するところでしょう。
成果が関係なければ、リモートワークでも「在席」しなければならないと決めることは、ある種合理的とも言えます。
しかし、私も含めて「知識労働者」を主とするリモートワークをする人々にとって、この「監視」に違和感を感じる人も多いでしょう。
「仕事は時間ではなく、成果だろう」
という声も聞こえます。
リモートワークは「サボるやつ」にルールを合わせてはいけない
これらのことからわかることが
「リモートワークは「サボるやつ」にルールを合わせてはいけない。」という事実です。
つまり、ルールやシステムだけを適用することでリモートワークを推進すれば、必ずその抜け穴を悪用したり、本来の意図を無視した運用をする社員が出てきてしまいます。
また、私の古巣でも最近は「リモートワーク」が禁止されました。
詳細はわかりませんが、最近ではGoogleやFacebookなど、新興のIT業に押され、入社する人のレベルが下がっているのかもしれません。
そうすれば、「成果にこだわる」という文化が失われ、リモートワークを禁止する、という方向に行くこともありえるでしょう。
ではどうするか。
リモートワークの運用を、ルールやシステムで「縛る」ことで厳密にしようという発想から抜け出す必要があります。
必要なのはソフト面、つまり「結束」「信頼」「責任感」といった、メンタル面のサポートを強化することです。
例えば社員が
「会社からの信頼を裏切りたくない」
とより強く思えば、リモートワークを監視する必要などないでしょう。
「皆の期待を超える仕事をしたい」
と願う人が増えれば、リモートワークだろうとオフィスだろうと、生産性に変わりはないはずです。
結局のところ、社員の一人ひとりが責任感を共有できている状態、一種の「コミュニティ」とならなければ、効果的なリモートワークは夢のまた夢です。
そう考えれば、「リモートワーク」は「できる人」の特権ではありません。
「社員からの信頼が厚い会社」の特権なのです。
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(Photo:Ryan Morse)