「新しい働き方」をする人が徐々に増えていると言われる。

だが「新しい働き方」の定義と実態とはどのようなものか。メリットが強調されるが、デメリットはないのか。そういったことについてはあまり情報はない。

時に「リモートワーク」や「時間が自由」など、制度面だけが強調されるが、本質的には「社会と人に対する考え方の変革」につながっている、重要なテーマだ。

 

そこで、つい先日「新しい働き方」について、グループで議論をする機会があったので、その議論についてまとめ、展望と課題について見てみる。

 

 

1.「時間」ではなく「成果」を中心に働くようになる

「新しい働き方の特徴の一つは、報酬が「労働時間に応じて支払われるのではなく、成果に応じて支払われる」という点ですかね。」

皆が頷く。

「「作ればその分売れる」って言う時代じゃなくなりましたからね。「働けばその分もらえる」がなくなるのも無理ありません。実際、大企業が率先して人件費を抑制しようとしていますからね。今の高齢の正社員がいなくなる頃には、働いている人の8割が「業務委託」とか「契約社員」とか普通にありえると思います。」

 

一人が異を唱える

「でも、成果って水物じゃないですか?短期志向になりそう。」

「……。長期的に見れば、実力通りになると思うよ。そう考えると、実力と運を持っている稼げる一部の人と、稼げない大部分の人、という構図にならないかな。」

「なると思う。「実力にかかわらず全員が稼げる時代」なんて、歴史上殆ど無かったからね。ここ4、50年の日本が異常だったんじゃない?」

「そうだね、社会保障を企業が担っていた時代は、もうオシマイかな。ただ、政府に何とかできるかどうか……。」

 

だが、楽観的な人もいた。

「世の中、できる人ばかりじゃないからね。でも、たった100年前は、肉体労働者の人が世の中の殆どだったんでしょ?今は考えられないけど。だから、少しずつ皆、状況に適応していくんじゃないかな。」

「そうあってほしいよね。」

 

 

2.複数の組織に所属して働くようになる

「複数の組織に所属して働く人も、最近かなり増えた。ウチも今、3分の1くらいの人はフリーランスだね。できる人は稼いでるみたい。」

「ウチも副業解禁したよ。大学の先生もパラレルワークを推奨している人がかなり出てきているね。新卒の学生さんが影響受けてて、面接で「副業OKか?と聞かれた」って言ってた。」

皆、自分が学生だった頃は考えられない、と言っている。

 

「あと、副業すると、めちゃくちゃ勉強になるよね。実際に自分がやってみて、企業のあるべき姿とか、価値あると思っていた知識も「単なる思い込みだった」ってことがたくさんわかった。」

概ね、複業には好意的な人が多い。また、最近の会社では結構皆、副業を認められているようだ。

 

だが、そうでない人もいる。

「私はどちらかと言えば、複業反対かな。」

「何で?」

「私、それほど仕事好きじゃないから、一つの仕事で安定して稼げるなら、できるだけその他の時間は趣味に充てたい。」

 

また、副業禁止の会社もまだ多い。

「ウチの社長は副業反対なんだよね……。」

「何でですか?」

「他の会社のために働く時間があったら、ウチのために使え。フルコミットしてくれってさ。なら給料上げろっての。」

「そうだねー、本当に給料って上がらないよね。」

「ウチの社長は、表向き、物分かり良さそうに複業解禁してる。でも、裏では「副業する人は評価を下げる」って言ってる。これってどうなの。」

「独占欲とか、支配欲の強い社長や管理職もいるからね。でもまあ、そういう会社って徐々に衰退するんじゃないかな。」

「なんで?」

「いい人が来ないからだよ。だって「知識」って色んな所で使えば使うほど更新されて良くなるし、社内にしか使えない知識とかって、魅力を感じないでしょ?知識は汎用的だから使いでがあるのに。そんなこと言う経営者は、アタマが悪いと思う。」

「会社への帰属意識は?」

「なくなってくると思うよ。だって、社会保障を担っていた会社が先にその役割を放棄してるんだよ。社員だって自衛するよ。」

「会社への帰属意識がなくなると、ギスギスした雰囲気になりそう。あと「自分の領域以外の仕事はしない」って言う感じになるんじゃないかと思う。」

 

 

3.キャリアは自分で作り、能力開発も自分で行う。

「長く勤める人が減ると、会社はキャリアづくりや能力開発への投資をしにくくなるよね。」

「そうだろうね、「キャリア開発は自己責任」になると思う。」

 

だが、否定的な人もいる。

「自分でキャリアを決めるのは、結構難しいと思うんだけど。キャリアカウンセラーを名乗る人が増えたのは、そういう背景じゃないかな。でも、紹介会社のキャリアカウンセラーを信用していいのかどうか、なんとも言えないよね。明らかに「先に自分のキャリアをなんとかしなさい」って人もいて。」

またある人は言った。

「できる人はそれで良いんだけどね。できない人は完全放置されて、ますますできなくなる、みたいなことが起きないかと。」

皆頷いている。心当たりのある人がいるようだ。

 

「でも、会社がいくら与えても、自分で勉強する気のない人はダメだよね。

「あー、わかる。会社の研修とか寝てる人いるし。信じられないよね。」

「そういう人には不要かもね。」

「うちの会社は、契約社員とかにも研修受けさせてるよ。すごい感謝される。中にはむしろ社員よりも熱心に活用している人もいる。」

「へえ、ヤル気あるね。」

「最近、友達で「大学に入り直した」って人がちらほら出てきてるけど、一人は会社には頼らないし、頼れない、って言ってたよ。未だに座学ばかりの研修しか用意してないから、行くだけ時間の無駄ってさ。」

実は「もともと自己責任」だったものが、よりはっきりしただけじゃないのかな。

 

 

4.会社が社員を管理するのではなく、社員の自己管理に委ねる。

「管理職って、どんどん要らなくなるよね。リモートワークも、フレックスタイムも上司の管理じゃなくて、自己管理に期待しているわけでしょ?」

「そうかな、そんな単純じゃないと思う。逆に管理職に求められる技能は上がるんじゃないかな。でも、「時間じゃなく成果」「複数組織で働く」「キャリア開発と能力開発は自分で」も、すべて「自己管理」の方向だね。だから多分、管理職の役割は「全員がうまく自己管理ができるようにサポートする」になると思う。」

「そういう意味では、学校教育も変わらなくちゃだね。先生の言うことを聞きなさい、いわれたとおりにやりなさい、ではダメだよね。

ある程度見解の一致があるようだ。

 

「でも、どうしても自己管理できない人はどうなるんだろうね。」

「時代に適応できないと、仕事していけないだろうね。それか、単純な、取り換えのきく、時間で働く労働者になるか。」

「厳しい道だなあ……。」

仕方ないよ。お客さんの要求がどんどん厳しくなってる。元はといえば、自分たちが悪いんだよ。みんな、一番のものしか買わないから。自分が作ったものを買いたいって思うかい?僕の知ってるスマホの開発者は、「自分の作ったもの」じゃなくてiPhone買ってるよ。それが悪いんだよ。」

「確かにそうだけどさ。」

「あなた達だって、近所のマズいラーメン屋行かないでしょ?高くて今ひとつな商店街の八百屋で買い物しないでしょう?みんなチェーン店に行って、イオンで買い物するんだよ。「地元の零細企業でしか買い物をしてはいけません」っていう法律を作ればいいけど、皆嫌がるでしょ?

「まあ、たしかに企業じゃなくて国が解決すべき問題だな。」

 

 

5.情報発信を求められる

「新しい働き方に必須なのって、実は「情報発信」だよね。要するに「発信して、仕事を自分で取ってくる」ってことができないと、結構マズいんじゃないかと思う。」

「なんで?」

「だって、会社が勝手に仕事を与えてくれるわけじゃないし、副業しようと思ってもクラウドソーシングなんて、web上に転がっている情報では搾取されることも多いでしょう。」

「……それって、結構難しくない?」

「でも今はSNSにしろ、ブログにしろ、メッセンジャーにしろ、あらゆる人が自分の情報を少なからず発信してる。だから、特に難しいことではないと思う。要は意識してやるかどうかじゃないかな。」

「なるほどね。」

 

だが、一人の人が投げかける。

「でもさ、それってコミュニケーション能力の低い人には辛い世界だよね。だって、SNSでも「イタイ人」ってよく見かけるし、情報発信が上手い人ばかりじゃない。」

「そうだね。情報発信の作法って、憶える必要があるし、訓練が必要かもね……それって、どうやって学べばいいんだろうね。「失敗しろ」って言うけど、SNSの失敗って、致命的になったりするじゃない。」

 

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しばらく考え込んでいた一人の方が言った。

「……うーん、今までの話を聴いてると、やっぱりこれができる人はごく少数のような気がする。」

「そう?僕はそう思わない。あと30年もすれば、これがすっかり当たり前になって、今の人達が家父長制とか、封建制に持つ疑問と同じ疑問を、「サラリーマン」に持つと思うよ。」

「そんなもんかな。」

「そんなもんだって。人間の適応力って、思ったより凄いと思う。」

 

 

個人的には

「変化が必然なら、率先してそれを受け入れよう」

と誰かがいったことが、妙に心に残った。

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

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