10月は多くの会社で評価面談をする時期でもある。
そして、4月に入社した新人は、初めての面談でもある。
そこでは、がんばりが認められ、高い評価を受ける新人。期待はずれだったと、あまり良い評価をもらえない新人とにはっきりと分かれる。
では、伸びる新人と、伸びない新人の違いはどこにあるのか。
200名以上の社員のうち、新卒入社が半数を占めるソウルドアウト社の上席執行役員、長谷川氏は新卒が育つ様子を観察し、
「育つ人と、伸び悩む人のちがいは、「能力」ではなく「考え方」にある」と言う。
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(ソウルドアウト社 上席執行役員 長谷川氏)
正直言えば、能力的な部分は、採用の時点で大きく差はありません。
差が出るのは考え方のちがいによってです。
考え方によっては、もともと持っていた能力が仕事に活かせる人と、そうでない人に分かれます。
特に、つぎの3点に対する「考え方」は仕事に大きく影響します。
1.他者からのアドバイスを「自分への攻撃」と捉えてしまう人は伸びない。
昔、あるプロジェクトで、お客さんから若干の苦言を頂いてしまった社員がいました。
仮にYさんとしましょう。
当然、その話はYさんにも言わなければなりません。
私達は丁寧に、そのことをYさんに話しました。
「Yさん、お客さんから◯◯という指摘がありました。プロジェクトを頑張っていただきましたが、この点は改善の余地があります。」
すると、Yさんは怒ってしまったようでした。
「いや、今回はお客さんの製品が市場とあっていなかったですよ。どう考えても。」
「なぜですか?」
「事前のヒアリングのときには、都合の悪い情報をあまり出してくれなかったですよね。後から知りました。」
「なるほど。でも今回お客さんから頂いた指摘は、そのこととはあまり関係ないですよね。」
Yさんはますますムキになって、こう言いました。
「私の事、嫌いなんですか?」
残念ながら、これ以上Yさんと話してもなかなか進展は望めませんでした。
Yさんのような方は極端な例ではありますが、「不都合な情報は耳に入れたくない」という方は結構います。
彼らは、上司や同僚のアドバイスを、「自分への攻撃」と捉えてしまうのです。
2.「自分の意見を強化する情報」しか取り入れない人は伸びない。
更に、上のような人にもう一つ見られる傾向が、「自分の意見を強化する情報」しか取り入れようとしない、というものです。
例えば「コンバージョン率が伸び悩んでいるプロジェクト」がありました。
そのメンバーの一人にTさんという人がいました。
彼は調べ物も得意ですし、数字にも強い。
ただ、一つ重大な欠点があったのです。
Tさんに上司が「コンバージョン率が伸び悩んでいる原因がわからないなら、一度お客さんに電話して、受注したお客さんの傾向をもう一度洗い直してみては?」というアドバイスをしていました。
するとTさんは「うーん。」と渋るのです。
「早くお客さんに電話してみなよ」と言うと、彼はパソコンに向かって検索をはじめました。
10分後。
Tさんは勝ち誇ったように、報告してきました。
「ほら、このページにこう書いてあるじゃないですか。私のやっていることは正しいはずなんですが……。」
上司は呆れて言いました。
「いや、現実はそうなってないから、聞いたほうがいいって。」
「どう考えてもおかしいですよ。ちょっと友人に聞いてみます。」
Tさんは結局、自分の意見を強化するような情報を探し、自分の意見を擁護してくれる人の話しか聞こうとしませんでした。
心理学的には、このような傾向を「確証バイアス」と言うそうです。
「人は、自分の見たいものしか見えない」との言葉通りです。
3.「楽しく仕事しているだけ」では伸びない。
常に自分が気持ちよく、ストレスのかからない状況で仕事をするのは、非常に楽しいものですが、残念ながらそういった環境に慣れてしまうと、なかなか能力が伸びづらくなります。
時には逆境を選択しなければ、大きく能力が伸びることはありません。
例えば、弊社のメンバーのAさんです。
前職は株主でもある「オプト」という、インターネット広告代理店に在籍していました。
彼はとても期待されていたメンバーの一人でしたが、なぜかオプトでは、よく言っても十人並みの成果しか挙げていませんでした。
能力は高く、人当たりもよい。
だが、当時は何かが足りなかったのかもしれません。
彼は「自分を試したい」と、大手企業ばかりをクライアントに持つオプトから、地方の中小企業を顧客層に持つ、ソウルドアウトに思い切って移籍してきました。
そして、彼の望みどおり、縁もゆかりもない地方に、拠点の立ち上げメンバーとして派遣されたのです。
社内に不安の声がなかったわけではありません。
実績からすれば当然のことです。
しかし、驚くべきことに「拠点の立ち上げ」という経験を経て、彼は驚くべき成長を果たしました。
昔の彼を知る人は「別人のようだ」と言います。
さらに、この現象は再現性がありました。
地方拠点の拠点を任された人物は、非常に大きく能力を伸ばすことが多かったのです。
「人間は環境の生き物」と言われます。
進化心理学者のスティーヴン・ピンカーは、その著書の中で、
「子供に対して親が影響を与える割合はほんの僅かで、子供がどのような人間になるかは、どのような環境で育ったかに大きく依存する」というエビデンスを提示しています。
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人間は「持って生まれたもの」「誰に教わったか」よりも、遥かに「どのような環境に身を置いたか」に強く影響されるのでしょう。
そういう意味では、ビジネスの世界で大きく能力を伸ばそうと思えば、どこかのタイミングで逆境に身を置き、自分の能力の限界を押し広げる経験をして置かなければならない、というのは合理的です。
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以上が、伸びる人、伸びない人の考え方のちがいです。
最後になりますが、実は1.の人物も、2.の人物も、地方拠点や子会社の立上げに関わる、
1年目、2年目になかなか活躍できなかった人物でも、ほんの少し、世界の見方を少し変えるだけで、大きく成果をあげることができるのです。
実際、「劇的に変わった」と評価される人が、誰の周りにも一人くらいはいるのではないでしょうか。
スポーツの世界にも、芸術の世界でも、「遅咲き」と言われながら、急に活躍が目立つ選手がいます。
彼らは生まれ変わったわけでもなく、急にIQが高くなったわけでも、突然運動能力が伸びたわけでもありません。
彼らただ、「視点を変える」ことに成功し、より貢献できる働き方を選択できるようになっただけなのです。
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(Photo:8 Kome)