ライフネット生命の岩瀬大輔氏が、「入社2日目の明日から試して欲しいこと」という文章の中で、

毎朝、定時より30分前にきっちりした身なりで出社し、新聞を読んでなさい

簡単なことだが、もしこれを1年間、1日も欠かさず続けることができれば、1年後には皆さんの社内における信頼は確実に高まっていることだろう。

という発言をして、物議を醸している。

この文章を読む限りでは

「社内営業をきっちりとしなさい。そうすれば、「できるやつだ」と思ってもらえて、仕事がやりやすくなるよ」

という趣旨だと思うが、「簡単だからやればいいじゃない」という擁護派、「余計に働かせんな」というアンチなど、意見は様々である。

 

さて、この話を読んで思い出したエピソードがある。私が社会人2~3年目だった時、顧客先に訪問した際の、その会社の新人と部長との会話だ。

一部の会話はうろ覚えの部分もあるが、だいたい下のような趣旨だったのではないかと思う。

 

新人 「部長、なんで社内営業しなくてはいけないんですかね」

部長 「社内営業?」

新人 「この前部長は我々に、「先輩と飲みに行って自分を売り込め」って言っていたじゃないですか」

部長 「ああ、その話か。あれから先輩に声かけたか?」

新人 「やってません。なんかそういうことって、やりたくありません。」

部長 「ほう」

新人 「人に媚びたり、へつらったりするのは良くないことだ、って言うじゃないですか。まして、「先輩と仲良くする」ってことと、「成果を出す」っていうことは別だと思うんです。そもそも「先輩に気に入られるための活動」って言うのは、お客さんの方を向いていません。」

部長 「なるほど、そのとおりだな。嫌なら別にやらなくていいよ。」

新人 「え?」

部長 「嫌ならやらなくていい、と言ったんだ。単なるお節介だからな。」

新人 「そうですか…。でもなんであんなことを言ったんですか?」

部長 「世の中にはいろんな人がいるからさ」

新人 「どういうことですか?」

部長 「成果を重視する人もいれば、仲の良さを重視する人もいる。血縁を重視する人もいれば、学歴を重視する人もいる。世の中にはいろんな人がいるんだ。だから、「成果を出せば認められる」と言うのは、建前としては正しいが、実際の社会ではそういうわけにも行かない。」

新人 「でもここは会社です。成果が重要でしょう」

部長 「その通り。でも、そういった考え方を人に強制するのは、「先輩と飲みに行け」というのを強制するのと同じだろう?」

新人 「…」

部長 「私は皆に「社会人として望ましい考え方をして欲しい」とは思うが、強制はしない。所詮、強制したところで人の考え方は変わらないしな。せいぜい飲み屋での愚痴が増えるぐらいだろう。だから、例えばその人が「成果だけ見て欲しい」というなら、そうするよ。新人といえど大人だからな。大人としての扱いをする。」

新人 「全員を成果だけで見る、ということですか?」

部長 「一所懸命社内営業することで評価されたい、という人もいるし、それを喜ぶ人もいるんだ。実際、先輩と仲良くすることで、仕事が円滑に進むこともある。だから、全員を一律の評価基準で見ることはできない。人にはいろいろな得意分野があるんだ。」

新人 「じゃあ、結局私はどうすれば評価されるんですか?」

部長 「いろいろな人が、いろいろな評価基準を持っている。できるだけ多くの人の評価基準にマッチする人が、評価されるだけだ。人事が示している評価基準なんて、ほんの一部さ。」

新人 「…」

部長 「まあ、私の評価基準には、「仲が良い」は入っていないからな。別に私と飲みに行く必要はないさ。」

新人 「社会人って、大変ですね。」

部長 「まあな」

 

後に、この部長さんは、この新人から「飲みに行きましょう」と誘われたらしい。

 

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安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
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(2025/6/2更新)