インターネットの出現で大きく世の中は変わりましたが、未だに「ネット」と「リアル」を隔てる壁は大きいと感じる人は多いのではないでしょうか。
「ネット上では偉そうなこと言っているけど〜」
「リアルのほうが〜」
など「ネット」と「リアル」は対立する文脈で言及されることが多いと感じます。
ですが果たして本当に「ネット」と「リアル」は分断されているのでしょうか?分断されていないとすれば、それはどのような形で関わっているのでしょうか?
ここに着目して研究をしている大学の先生がいます。実践女子大学の松下先生です。
松下慶太
実践女子大学人間社会学部・准教授。京都大学文学研究科にて博士(文学)。
フィンランド・タンペレ大学ハイパーメディア研究所研究員を経て現職。 専門はメディア論、学習論、キャリア論、コミュニケーション・デザイン 近年はソーシャルメディア時代の職場のメディア論、コミュニケーション論を研究。
また平行し て女子とキャリアについての一連の調査やワークショップ、プロジェクトも推進している
―松下先生はどのような研究をなさっているのでしょう?
基本的には「オンライン(ネット)」が「オフライン(リアル)」に与える影響を研究しています。そしてそのフィールドは大きく分けると2つあります。
一つは「渋谷」という街の研究です。渋谷は若者や異文化のるつぼです。丸の内がニューヨークだとしたら、渋谷はサンフランシスコにあたるような街ではないでしょうか。
ハロウィンでは渋谷に仮装をした人々が集合しましたが、なんでこんなに人が集まってくるのか?これは非常に興味深いことです。また、IT企業やデザイナー、フリーランスの人が集まってくるという現象も興味深いものがあります。
渋谷区は、新宿高島屋から表参道、恵比寿、原宿などまで広がっていて、多様性にあふれています。若者のコミュニケーションに関心ある私としては、フィールドワークをする場所として非常に面白いのです。
そしてもう一つがネットが働く場所(ワークプレイス)と働き方(ワークスタイル)に与える影響を研究しています。
例えば在宅勤務、地方移住、グローバル化が進んでいますが、都心への通勤ラッシュは相変わらずです。また人工知能やロボットなどの登場で今ある職業のかなりの部分が機械に置き換えられるという調査などもも出てきています。
こうした働く場所(ワークプレイス)と働き方(ワークスタイル)について、経営学・経済学から語られがちですが、私は移動や空間、コミュニケーション、コラボレーションなどをキーワードにメディア論のアプローチから研究を進めています。
―「オンライン(ネット)」が「オフライン(リアル)」に与える影響、というと具体的にどのようなことが考えられるのでしょうか?
ネットが普及して以来、「オンライン(ネット)」と「オフライン(リアル)」を切り分けるべしという議論はずっとされてきましたし、今でもされています。
ネット上でやっていることはリアルに持ち込まない、あるいはリアル世界での活動をネットで公開しないほうがいい、またネットに没頭しすぎてリアルの世界から離れて引きこもるといったイメージや考えは根強いと言えるでしょう。
でも、様変わりしている部分も多くあります。
例えばフェイスブック、インスタグラムなどソーシャルメディアの普及によって「ネットでおしゃれに見られたい」ためにリアルでそのような行動するといった使い方をするユーザーが増えました。
つまり、「オンライン(ネット)」が「オフライン(リアル)」に影響を与え、どこまでが「オンライン(ネット)」でどこまでが「オフライン(リアル)」かの切り分けが無くなってきているのです。
また、「通販では買わない、原宿のこのお店で買いたい」というのはモノとして同じじゃないかということではなく、わざわざそこで買うというリアルな体験・経験を重視しているのです。
こうした感性はライブやフェス、エレクトリックラン、スライドザ・シティなど体験型イベントの人気を見ても分かります。
もはや渋谷の名物のひとつとも言えるハロウィンのここ数年の盛り上がりもそうでしょう。これらの背景にはその体験・経験をソーシャルメディアにアップしたいという欲求があるのではないでしょうか。
−オンライン(ネット)があるから、現実の行動が変わるということでしょうか?
そうです。オンライン(ネット)が存在すること前提のオフライン(リアル)と、それを前提としないリアルは、同じように見えてもその根底にあるのは違うものだと思います。
例えば人気スイーツ店に行列するというオフライン(リアル)の行動はそのお店で食べたいというのと同時に、あるいはそれ以上に「その写真をアップしたい」などオンライン(ネット)での行動を前提として起こっている。
他にも渋谷のスクランブル交差点に外国人が来るのは、そこでの体験・経験の画像や映像をオンライン(ネット)にあげたいからという人も多いでしょう。
単に個人的に見る、食べるなど体験に留めず、ほぼリアルタイムでその写真や動画をつくって、誰かとシェアすることを起点として行動が変わるのです。
モバイルメディア、ソーシャルメディアが普及した社会ではネットとリアルそれぞれが参照しあいつつ構成されている、一種のメビウスの輪になっているのではないかと思っています。
こうした考えは社会学者・富田英典の言う「セカンド・オフライン」にインスパイアされています。
(出典:松下慶太 ワークプレイス・ワークスタイル の変容とセカンドオフライン)
―オンライン(ネット)の発達によって、働き方に影響はあるのでしょうか?
はい。オンライン(ネット)でできることが増えるからこそ、オフライン(リアル)で会った時、せっかく集まったのなら何するか、が重要になってきます。
人工知能やロボットが出てきた時に人間は何をすべきか?その中で感情やイノベーション、クリエイティビティの重要性が高まっているという議論とも相通じるところがありますね。
最近、研究対象としてワーク+バケーションの造語である「workation:ワーケーション」に注目しています。
完全休暇はとりにくい、でもネットに接続できてメールを確認したり、仕事ができるのであればオフィスにいなくても南の島など別の場所でリフレッシュしながら休暇がとれる。これもオンラインを前提とした、オフラインの楽しみ方です。
また、研究室のゼミ活動も、集まったのならその場で本を読むよりもそこから議論して何かを考える、もっと言うとプロジェクトやワークショップをやる。
せっかくリアルに集まって来るのだから、ネットを前提として、じゃあリアルで何をやるかをもっと突き詰めて考えないと、と思いますね。
今は「ネットばかりだと、リアルがおろそかになる」とは言えないでしょう。
ー同じように、働く場所も変化するのでしょうか?
「ノマドブーム」は行き過ぎでしたが、今もスターバックスが会議室になっている光景は珍しくありません。またネットの発達で働く場所が自由になったことによって「テレワーク」「コワーキング」が発達してきています。
働く人たちのアウトプットが変わるのか、新しい物が生み出せるのか、など興味深い点が数多くありますので、実際にコワーキングスペースで参与観察、インタビューを行っています。
(出典:松下慶太 ワークプレイス・ワークスタイル の変容とセカンドオフライン)
−コミュニケーションメディアの発達は、様々な影響があるのですね。
伝統的なメディア学は、マスコミの影響力についての研究が中心であり、プライベートで用いるメディアは重視されていませんでした。
しかし、90年代以降、ポケベルやケータイなどプライベートな、そしてモバイルなメディアも徐々に重視されてきていますし、これ以降も重要度は上がっていくのではないでしょうか。さらにそこにTwitter, Facebook, Instagramなどソーシャルメディアも登場してきました。
こうしたメディアの利用についての先端事例が生み出され、また許容する懐を持つ渋谷は、研究的に非常にワクワクする場所だと思っています。
ゼミではここまで話したような「オンライン(ネット)」を前提とした「オフライン(リアル)」を研究、実践しています。例えば以下のようなプロジェクトです。
・広尾商店街の来害者を増やすためのソーシャルプロモーション
・WorkLifeSmile♪ 女性のキャリアを考えるワークショップ
・伯耆キッズプロジェクト 鳥取県伯耆町の地方創生活動
https://www.facebook.com/
−なぜこの道に進まれたのでしょうか?
私はもともと現代史を専攻していました。現代美術に関心があり、ピカソ以降のメディアアートやパフォーマンスアートに興味があったのです。
ただ、私は絵そのものの価値よりも「生身の体験は、どのように構成されているか?」「アートから受ける刺激は何から構成されているか?」に興味がわき、そこからメディア研究に進みました。
−アートからメディアとは、おもしろい流れですね。
そうですね、でもその流れは自分の中では自然だったと思っています。
台湾における日本のポップカルチャーを研究した際は、世代によってメディアへの関心が異なることから、歴史が関心に深い影響を及ぼしていることがわかりました。
また、塾でバイトをしていた時に生徒がいじっているケータイをみて、学校における情報化に関心を持ち、博士課程では掛図、ラジオからテレビ、PCに至るまでの「学校におけるメディアの扱われ方」を研究していました。
ただ、学校をテーマにしてわかったのですが、学校はどうしても変化が遅いので、今は「仕事」に着目しています。FAXの導入や電子メールの浸透で仕事は大きく変わりました。
まだまだ変革の余地がかなりたくさんありますが、会社は順応が早いと思っています。働き方が変われば、学校やその他の制度も変わるでしょう。
−先生、どうもありがとうございました。研究にご興味のある方は、こちらからコンタクトをお取り下さい。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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3.人材育成の進め方とそのポイント
4.弊社の支援内容の紹介
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3.【STEP 2:成功事例で学ぶ生成AIを使った具体的なアプローチ】
4.生成AIを使った自社社員が動ける仕組み作り
5.まとめと次のステップへ
日時:
2024/11/22(金) 10:00-11:30
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
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